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F15はチタン合金など軽くて強靱な素材で作られている。その為に自重がF14よりも5~6トンも軽い。追うにしても逃げるにしてもF14では分が悪い。
(まさか。このままじゃ…)
藍華も今の状況が最悪だと分かった。F15から逃れるべく左右の旋回をしている。しかし、F15からすれば、直線距離でミサイルを撃ち込むタイミングを掴めば撃墜出来る好機でもある。これに晃が気づいたのか今度は急降下で逃げに出る。
「あわわわわ~!」
急降下でのGに藍華は悲鳴を上げる。また、F14が海面に向かって一直線に向かっている事を藍華が気づくと恐怖が増した。
「晃さん!このままじゃ落ちちゃう!落ちてしまいますよ!」
悲鳴に近い訴えを晃に向ける藍華。
「黙ってろ藍華!」
晃は喚く藍華を一言で一喝した。これに藍華は黙ったが、海面に激突してしまうのでは無いかと言う恐怖は続く。逆にそれで言葉を失った。
(まさか晃さん戦意喪失?・・・)
背筋が凍る。晃が敵との戦いを絶望して自ら死を選んだのでは?と藍華は考えてしまった。操縦しているのは晃だ。本当に自爆を望んでしまったら脱出装置すら知らない藍華は晃と共に心中する事になってしまう。
(もうダメ!!)
コクピットから見える光景は海の蒼さだけ。藍華は希望を失った。
「よし!」
突然、晃が力強い独り言を言った。藍華が何の事か理解する間を与えず瞬時に晃はF14の機首を一気に上げた。この時。海面スレスレの高度だった。
そこから2基のF110エンジンの出力を上げて急上昇する。その衝撃に海面が波紋を描いて揺れた。
上昇した晃のF14は急降下した時でも追撃するF15が機体を引き起こしている所で狙いを定めた。相手はF14よりも軽く、機動力の高いF15。僅かな隙を逃してはならない。
「貰ったぞ!」
晃は僅かに機体下部を見せるF15にM61A1、20ミリバルカン機関砲の銃撃を浴びせる。それは溜まった鬱憤を晴らす様にF15を機体中央から貫き、銃弾という歯で噛み砕く。そしてF15は生気が失せた様に落下を始める。同時にF15のパイロットは脱出した。
「ふう…」
撃墜を確認した晃から深く短いため息が漏れた。
(え?勝ったの?)
ここに来て藍華はようやく晃が勝った事を知った。
振り返ると、急降下で逃げるF14をF15が追跡。海面間近になってF14が墜落するものと確信してF15は機体を引き起こして空戦空域に戻ろうとした所をチャンスを窺っていた晃のF14が仕留めたのだ。ある意味でチキンレースをして晃は勝利を掴んだのだ。