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「こちらティフィーネ待たせたな」
「ロッチャ戦闘!」
援軍のティフィーネ小隊とロッチャ小隊が戦闘空域に到着した。合わせて11機のF14が集まった事で状況は圧倒的優位となった。
「大丈夫?晃ちゃん」
海面近くから上昇した晃のF14にアリシアからの通信が入る。
「おう。1機落としたぞ」
元気な声で晃が答えるとアリシアは「良かった」と安堵の言葉を送る。
「晃ちゃん無理しちゃだめ」
アテナが晃を諭す様に言う。それに晃は「いや~スマン」と返す。この会話を聞くといつも藍華が見てきた三人の姿そのままである。
「敵編隊が離脱に入ったようです」
アリスが報告する。藍華は目の前にあるレーダーで敵編隊の動きを見る。確かに不利を悟った敵F15編隊を示す表示の群れがレーダーのディスプレイの枠目がけて移動している。それで藍華にも離脱しようとしているのが分かった。
(終わった?)
藍華は戦闘の終わりを予感した。
(無事に乗り切れた…)
生死の境を体験し、生を実感する藍華。
(けど、私は何をしたのだろう…)
けれども、生き残れたのは藍華自身の力では無い、晃が全力で敵と戦ったからだ。
(何が何だか分からないにしても私は役立たずじゃない)
藍華は何も出来ない自分をまた攻めた。目覚めたら見たこと無い戦闘機に乗り、機器を操作しろと言われる不条理に遭っても、いつもの仲間達と勝利を喜び合う事が出来ない。それに藍華は言いしれぬ孤独感を持った。
「こちらフロリアン01。艦隊より7時の方向から新たな敵編隊接近中!」
唐突に入る早期警戒機からの通信。これに晃も藍華もアリシア達は勝利と生き残れた余韻から頭を切り換える。
「三大妖精・ティフィーネ・ロッチャはすぐに敵編隊に向かえ!」
空母「アクア」からの指示が来る。
「グリムゾンローズより各機。新たな敵編隊を攻撃する!」
晃はついさっきまでの親しげな声から前線指揮官の厳しい声でアリシアとアテナに命じる。そして速く現場に向かうべく機体を旋回させ、主翼は機体と密着する68度で収まる。
急がねばならない。味方を救う為に。
空母「アクア」からは既に出撃させようとしていたスクアーロ(サメ)小隊4機を急いで発艦させた。そして別の小隊もすぐに発艦させようと飛行甲板は一気に喧騒に包まれる。フライトデッキでは新たな機の移動ルートを確保する為に邪魔になる機体を移動し、格納庫ではエレベーターに向かって出撃する機体と搭載させる兵装を移動させる。それらの作業の為にデッキクルー達や整備員が持ち場を駆ける。
出撃したスクアーロ小隊は「今は俺達が食い止めるしかない」と言う隊長の言で不利ながら戦いを挑んだ。だが、敵編隊のF15戦闘機がスクアーロ小隊を食い止める。
「まずい!敵攻撃機を止められない!」
スクアーロ小隊の隊長は焦りを感じた。敵のF15戦闘機によって食い止めるべき敵の攻撃機の進撃を止められない。
(まずい!間に合わない!)
急行する晃も焦っていた。今の位置では艦隊向けて進む敵編隊の主力に攻撃を加えられない。
(敵はまず、私達を別の方向へ誘い出して艦隊上空を手薄にさせた。そこへ攻撃隊を…単純な陽動作戦じゃないか!)
晃は過ぎた事とはいえ、歯がゆい思いをした。だが、それを晴らすにはまだ距離が遠い。
このままでは敵の攻撃機のミサイル攻撃に艦隊は晒されるだろう。艦隊の防空能力は低くは無いが損害は必ず出てしまうだだろう。
(くっ…・)
手出しが出来ず味方が攻撃を受けているのを見る事になってしまう。それに晃は悔しさを酸素マスクの下に隠した口元を歪ませて表していた。
「こちらサラマンダーこれより戦闘空域に入る!」
そこに明るく自身に満ちた声の通信が入る。
「サラマンダー?・・・暁か!」
晃は通信の主が分かった。
「こちらグリムゾンローズ!サラマンダーリーダー・・・いや、暁!ここは任せたぞ!」
「ぬ、グリムゾンローズ。晃か、オレ様に任しておけ!」
サラマンダー小隊の隊長。それは出雲暁であった。暁は上機嫌で艦隊のピンチを救おうとラファール戦闘機で敵編隊に向かう。
(どうやら、味方の艦隊が来たようだな。これなら助かるか)
晃は援軍の到着に希望を見出した。