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三大妖精の小隊は接近する敵編隊と正面から迎える位置で進む。
「スパローで敵の出鼻を挫く。それからティフィーネとロッチャが来るまで敵を掻き回す」
晃の立てた作戦は中射程のAIM7スパロー空対空ミサイルを敵編隊へ発射。その時に敵がスパロー回避に移った所で小隊は突撃して2個小隊の応援が来るまで敵を混乱させると言うものだ。
「これより戦闘に入る!」
晃の号令で3機の海猫はレーダーに映る敵目がけて2基のターボファンエンジンの唸りをより一層高めて速度を上げる。それは敵を前にした雄叫びにも聞こえる。
「藍華。スパローを発射する。OKか?」
晃の問いに藍華は口を閉ざす。
「おい、藍華?」
晃は心配した声で藍華をまた呼ぶ。
(分からないよ~。スパローて何の事!?)
藍華は目の前の機器を凝視して固まっている。円形のディスプレイには密集した光点が画面の中心に向かっている事しかこのトムキャットの中では分からない。
「藍華!おい、返事をしないか!」
晃の声は焦りに満ちていた。これから戦闘だと言うのに火器管制を担当する相方がショートしたコンピュータみたいに沈黙しているのだ。
「晃ちゃん、どうしたの?」
無線でアリシアが呼びかける。ミサイルを撃つと言いながら撃たない晃と藍華のトムキャットを見て心配になったのだ。
「ミサイル撃たないようだけど故障?」
今度はアテナも無線で尋ねる。しかし、声は戦場にいるとは思えないのんびりした声だ。
「……どうやら電気系統のトラブルでミサイルが発射できないらしい…」
晃の落ち着いたようで何か諦めた様な声だ。
「じゃあ…」とアリシアが言い掛けると晃は続く言葉を遮る形で「スノー・ホワイト。セイレーンはミサイルで援護しろ!」と命じた。
「けど、それじゃ晃ちゃん…」
アテナはのんびりと心配する声も晃には聞き入れられない。
「敵は目の前だ!突撃する!」
晃はアリシアとアテナを振り切るような言葉を言いながらトムキャットを上昇をさせる。
「え?え?」
アテナが晃の突然の事に驚く。
「アテナちゃん。行くわよ」
アリシアは晃の意志は理解したと言う口ぶりでアテナに言った。
晃と藍華のトムキャットは編隊から抜けて上昇し、高度8000の所で水平飛行に移る。
「藍華。聞こえるか?」
晃は藍華に呼びかけるが返事は無い。
「返事は良いから聞け。これからバルカンでのドッグファイトに入る。覚悟しとけ」
晃は藍華に言い聞かせると機体を右へ急旋回し、急降下に入る。
「あわわわわわ!」
急降下で発生したGで藍華の身体は座席のシートに貼り付けられる。それに藍華は声にならない
悲鳴を上げる。
「ミサイル発射!」
「セイレーン命中!」
晃と藍華の耳には火器管制をしている灯里とアリスがミサイルの発射や命中を報告しているのが聞こえる。あの後輩ちゃんアリスも恥ずかしい台詞しか言わない灯里も戦場でやるべき事をこなしている。
(なのに私は~…)
重力に身体を嬲られながら藍華は心の中で自分を激しく罵った。それは藍華の視界に青い空と雲の間で黒煙が伸び、ミサイル命中の閃光がまたたく戦場の光景を見て尚更強く自虐に心は囚われる。
「よし、あいつだ」
晃はそう言うと降下の角度を緩め、今度は左旋回で敵機の背後に回ろうとする。
敵機は後ろを取られまいと旋回して晃から逃れようと進路を変える。晃は逃がさないとばかりに未来位置を予測して旋回を止めてまっすぐに向かう。
敵機は晃の動きを読んで右に旋回する。その時に遠くに見えるおぼろげなシルエットで敵機の正体を確認した。
「F15。これは強敵だな…」
晃は苦笑いをした。
(海猫が鷹を食うか。面白い)
晃はそう考えて気持ちを奮い立たせた。
だが、相変わらずミサイルにロックされまいと考えて急旋回を繰り返すF15に晃は追いつけずにいた。
「ぬぬぬ…」
F15に付き合い同じ進路を取る晃のトムキャット。しかし、翼面荷重が小さくエンジン出力の余裕があるF15は急旋回を行いつつ上昇出来る高い機動性がある。その素早い動きに晃は翻弄されようとしていた。
そこに突然コクピッツトにけたたましい警告音が響く。
「くそ、後ろに付かれたか」
晃のトムキャットの背後に別のF15が味方を助ける為に来たのだ。そのF15の追尾レーダーが晃の機体を捉えている。
「運のいい奴め!」
眼前の獲物を諦めて晃は機を左に急旋回して背後のレーダーから逃れる。だが、今度はそのF15が晃を追う。立場は逆転した。