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架空戦記小説と軍事の記事を中心にしたブログです
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太平洋戦争の末期に日本軍は特攻戦術を主たる戦術として実行した。
その特攻で日本軍は専用の兵器を幾つも開発し実戦に投入した。今回はその一つである「回天」を特集する。

1943年(昭和18年)に2人の将校が海軍上層部に新兵器の構想を持ち込んだ。それは九三式酸素魚雷を動力にして操縦者一名が乗ると言う物だった。それを考えたのは黒木博司中尉と仁科関夫少尉である。この2人は特殊潜航艇「甲標的」(日本海軍の小型潜航艇)の乗員で、彼らはそこから得たであろう人間魚雷の構想を考えて実現させようとした。
昭和18年は日米の戦局が逆転したガダルカナル島攻防戦が日本軍の敗北に終わり、米軍が太平洋とニューギニアで進撃を開始した頃だ。日本軍はガダルカナルの攻防で消耗した戦力が回復出来ず一度陥った劣勢を容易に挽回出来なくなっていた。
しかしながら軍令部は操縦者が魚雷もろとも散る事になるこの新兵器案を「時期尚早」で却下した。
昭和19年になると戦況の悪化は続き、黒木・仁科の両名は焦りを感じた。そして海軍上層部に強く人間魚雷開発の許可を求めた。
海軍省軍務局第一課長山本善雄少将は前回は却下したものの、2月26日に人間魚雷の試作を呉海軍工廠魚雷実験部に3基の人間魚雷を試作せよと命じた。その翌月には①~⑨の番号が付けられた金物と呼ばれる「特殊奇襲兵器」を試作する方針が海軍軍令部で決定された。その中の⑥金物(マルロクカナモノ)として人間魚雷「回天」の試作が決定した。
呉海軍工廠への命令と軍令部の決定で「回天」の開発は決まった。では何故に日本海軍は特攻兵器の開発を決断したのだろうか?フィリピンで神風特別攻撃隊が初めて出撃する半年以上も前に。
ここで当時の海軍将校の特攻への芽生えに注目する。
まずは城英一郎少将。天皇の側にある侍従武官彼は昭和18年6月に航空本部総務部長の大西瀧治郎中将に「特攻航空機」と言う案で文字通り航空機による敵艦への特攻を具申した。当時の大西は城の案を採用する事は無かったが、翌年に神風特別攻撃隊を編成し、出撃させた。少なくともこの時点で個人的には城の意見に同調していたのだろう。
次に海軍で「仙人参謀」とも呼ばれた黒島亀人大佐である。山本五十六連合艦隊司令長官の下で真珠湾攻撃やミッドウェー作戦を立案した人物である。黒島は連合艦隊司令部先任参謀の時に「爆装させたモーターボートでの体当たり」を思いつき、昭和18年7月に軍備を担当する軍令部第2部長になると「必死必殺ノ戦」や「必死必殺戦法」の必要性を説いた。「回天」が⑥金物として試作が決定した時に黒島は第2部長であった。その中には彼が着想した体当たりのモーターボート「震洋」が④金物としてあった。
黒木と仁科だけでは無く将官も昭和18年から特攻への考えが浮かんでいた。どれも「戦局を変えるには今までとは違うやり方で戦わねばならない」と言う考えであった。それが投下して自由落下する爆弾や直進する魚雷では無く、意志を持って敵に向かう人機一体の特攻へと至ったのだ。ドイツやアメリカは大戦後期にはホーミング魚雷を、ドイツは無線で誘導する飛行爆弾やミサイルを開発したが日本は実用化(対艦誘導弾)の目処が立ったのが終戦直前であった為に技術力で特攻は防げず、逆に特攻を促進する為に日本の技術力は使われた。
昭和19年8月に「回天」は正式に採用された。発案者の1人である黒木は9月7日に訓練中に事故で亡くなった。乗っていた回天の内部には自らの事故から回天改良の所見と遺書を書き残した。仁科は11月20日に回天特別攻撃隊菊水隊で出撃。ウルシー環礁で米油槽船「ミネンシワ」を撃沈したと言われる。

そして終戦までに106人が回天での特攻で戦死した。戦果は3隻を撃沈(駆逐艦やタンカー)、4隻に損傷を与えたとされる。
結果から見れば回天は日本の戦局を挽回するには至らなかった。しかしながら106人の回天特攻隊員の決死な思いには敬意を払いたい。
だが、特攻を立案し、実行させた将校には憤りを感じ。特攻に歯止めが出来なかった当時の日本の科学技術力に嘆くものである。
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