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たとえば冒険に満ちた世界
たとえばスターな世界
そんな世界が違う空間に存在するかもしれないのです
そうもしかしたら
あの階段の柱と手すりの間とかに
秘密の入り口があったりするかもしれません
<天野こずえ著「ARIA」第6巻158~159ページより>
ここはネオ・ベネチアにあるウンディーネ(水先案内人)の会社の一つ「姫屋」。その中にある藍華・S・グランチェスタの私室では1日の練習を終えてベッドで眠る藍華の姿があった。
「う~ん…アリシアさ~ん…」
掛け布団は既に床に落ちていて、大の字になって眠る藍華は別の会社のではあるが憧れのプリマの名を呟き心地よさそうな表情で寝ている。
「うにゅ~」
唸る様な声を出しながら藍華は身体を横向きにした。それは時間を経る事に何度も繰り返し、ベッドの上でゴロゴロと左右に転がる。そしてとうとう藍華の身体はベッドの端を越えてしまった。
藍華の身体はベッドから放り出た。僅かな空間を落下して固い床へと瞬時に衝突した。
「いっ…痛い~!」
激痛によって目が覚めた藍華は床にぶつけたおでこをさすりながら起き上がる。まだぼやけた視界ではあったがこの部屋がいつもの自分の部屋では無い事に気づいた。
白い壁紙で囲まれた部屋では無く、無機質な鉄の壁になっていた。また、落ちたベッドも簡素な作りの物だ。
「ここは私の部屋じゃ無い?・・・・」
半ば覚めたがこの状況を驚く程までになっていない、ぼんやりした藍華は周囲をぐるりと見渡す。見れば見るほどにこの部屋は部屋の作りも備えてある物もどれも簡易に作られていて居心地の良さは全くない事が分かる。
「ここは何処なの?」
周囲180度を見渡した藍華はようやく完全に目覚めて恐怖とも言える不安に陥った。見た事無い場所にいきなり自分がいる。それを藍華はこう結論を出した。
「わ…私は誘拐されたんだ!」
藍華は青ざめて引きつった顔で言った。
「大丈夫か藍華?」
「え?」
藍華の背後で声がする。それは藍華にとっては聞き慣れた声だ。
「晃さん、いつからそこに?」
背後を振り返った藍華は先輩ウンディーネの晃・E・フェラーリの姿を見た。
「お前がベッドから落ちた所からだ。それよりも大丈夫か?藍華」
晃は藍華を心配して言ったが、藍華は別の事についての質問で返した。
「晃さん。その格好は?」
藍華の目の前にある晃は濃い緑の作業服みたいな服を着ていた。これは今までに見ない格好だ。
「本当に大丈夫か?これはお前もいつも着てるじゃないか」
晃はさも当然だと答えた。
「え?いつも?」
藍華は晃の言葉に理解が出来ずにいた。だが、晃は藍華の腕を引っ張る。
「お前も早く着替えないか。すぐにブリーフィングで出撃だぞ!」
「え?何の事です?それにここは?」
藍華は晃の言葉に混乱を増すばかりだ。晃はそんな藍華を哀れむ様に答える。
「ここは空母『アクア』の艦内。藍華、お前はここで戦闘機パイロットなんだ」
「えええ!?」
藍華の混乱は頂点に達した。