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架空戦記小説と軍事の記事を中心にしたブログです
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秋だね。俺は風邪引いて昨日は寝てたよ~。だけど世の中は動いてるんだよね。

●防衛省のガンダムは普通科の強化だった
http://www.sanspo.com/shakai/top/sha200711/sha2007110504.html
防衛省技術研究所が研究する項目に「ガンダムの開発」と書いた事で話題になったが、実はモビルスーツの二足歩行兵器では無く、GPSに心拍を測り送信する端末・防弾チョッキを備えたモノを普通科(歩兵)の隊員に身に着けさせるものだった。
これは米陸軍のランドウォーリアと呼ばれる次世代統合型歩兵戦闘システムの導入をしようとしているのだ。
このシステムはGPSを装備して性格に自身の位置を把握し、通信端末を持つ事で司令部と味方部隊との情報を共有できて、報告や指示ももネットで瞬時に行える。通信機能を向上させた事で現場の状況把握と後方の司令部も現場の情報をリアルタイムで見ることが出来て適確な指示が早く出来ると言うのがランドウォーリアの利点である。
陸自はバトラーと呼ばれる赤外線の装置を付けて演習を行い。赤外線が当たったかどうかを演習を統括する本部で見れるようにし、今ではReCSと呼ばれるシステムで師団と連結した連隊や大隊から中隊~小隊を繋ぐ基幹連隊指揮統制システムを採用し、演習を行っている。
高度な情報システムを構築しつつある陸自は次のステップとして部隊単位から隊員個人へとシステムを導入しようとしているのだ。
将来の陸自は高い通信機能を基幹とした効率の高い組織へと移行しようとしているのだ。
にしても「ガンダム」はやり過ぎであろう(笑)
http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams06/w_1.html
(ランドウォーリアについて)
 ●広島に原爆を投下したB29エノラ・ゲイの機長が死去
http://www.asahi.com/international/update/1102/TKY200711010395.html

機長のティベッツ氏は原爆投下は戦争終結の為だったと正当性を主張し続けていた。記事には自身の葬儀や墓石は抗議活動を恐れて希望しないとしている。これを読むとティベッツ氏は正当性を主張しながらも心の中で戦争が終わらなかったのでは?と不安でもある。
原爆の開発と投下の指示は当時のアメリカ大統領のルーズベルトとトルーマンである。この2人の代わりに原爆投下の正否の議論の矢面に立ったティベッツ氏の冥福を祈る。

●沖縄戦の集団自決「軍の強制」を教科書の記述に復活か?
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_07110201.htm?from=goo
教科書での沖縄戦における集団自決が「軍の強制」の部分が削除された事から、その部分の記述を復活させるべく県民集会が行われ、沖縄県知事が文部科科学大臣に申請をした。
これは異常である。検証や証拠の提示無く圧力の様な行動で教科書の記述を変えようとしている。
沖縄戦での集団自決は明確に軍から県民に「集団自決せよ」と命じた資料は無い。だが、敵であるアメリカ兵を恐れて自決へと精神が焦燥に駆られて手榴弾や毒薬・飛び降りなどで自決する民間人が多かった。
これに民間人が退避しているガマに日本軍将兵が入り、戦闘に巻き込まれて共に玉砕するケースもあったものの、全体がそうではない。渡嘉敷島の様に軍の命令関係なく恐慌に陥った住民が自発的に自決の道を選んだケースもある。
http://shupla.w-jp.net/datas/Tokashiki.html
(渡嘉敷島集団自決に関する資料)
混乱した戦場を半世紀以上過ぎて白黒判別して検証するのは困難な作業だ。だが、一方的な事を「圧力」で書き換えるのは「歴史」を残す意味ではあってはならない事だ。
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11月4日に海田市駐屯地で行われる記念行事に行って来ました。
車を止められる場所が海田市には無いので電車で海田市へ向かう。
第13旅団の司令部がある海田市で行われるこの記念行事は旅団の創設を記念する行事でもあるから旅団の各部隊が一堂に集まる(旅団全員では無いが)
駐屯地に入ると式典と観閲行進に備えて隊員と車両が準備されている。その光景を見るのも結構好きだ。小銃を担ぎ隊列を組んで入場者の間を行進する隊員達。そして部隊長から指示を受ける様子。車両も部隊ごとにまとまって待機し、隊員達が点検をしている。その動く光景がとても新鮮なのだ。
ある程度それらを見回ると観閲行進と模擬戦を見るための場所取りに向かう。幸い模擬戦では良いポジションの最前列の場所を確保した。だが、式典の時間が近づくにつれて次々と来る来客の人達にサンドイッチとなった。今回は親子連れとお爺さんに・・・。
式典を前に旅団の各部隊が徒歩で入場する。部隊長とそれぞれの職種(兵科)ごとに色が違う隊旗を先頭に各隊が入場し、整列する。その場に旅団の4分の1の人数である1000人が並ぶ様は壮観である。
観閲指揮官の佐藤修一旅団長と国旗の入場で式典は始まる。
旅団長の訓示に続いて来賓の挨拶として今年の参議院選挙で当選した佐藤正久氏が来ていた。佐藤議員は元は陸上自衛隊の自衛官だった。「ヒゲの隊長」の愛称でイラク派遣の先遣隊と第1次復興支援群の隊長だった人である。
挨拶では「これかも国会で自衛隊の問題を改善していく所存です」という風に熱く語っていた。
更に自民党と公明党の議員の挨拶が終わると式典に来た来賓の名前を読み上げて観閲指揮官と国旗・整列していた隊員の退場で式典は終わる。
続いて第8普通科連隊隊員によるラッパの演奏(起床や昼食などの合図)。第17普通科連隊の隊員による和太鼓の演奏を前座に車輌の行進が始まる。
旅団本部管理中隊を先頭に各種装甲車や高機動車やトラックに隊員が乗って行進する。今年は第23次ゴラン高原派遣隊を第13旅団が勤めた事もあり、青いベレー帽を被った隊員がゴラン高原派遣部隊として式典に臨んでいた。
陸自の車輌はどれも良いが。やはり戦車だ。唸るエンジンとキャタピラ響かせて進む無骨な車体。それが73式装甲車1両も連れて4両の74式戦車が進む様は毎度感動を禁じ得ない(笑)
車両に続いて航空機の行進だ。第13飛行隊のUH1輸送ヘリ2機・OH1観測ヘリ1機と第5対戦車ヘリコプター隊と思われるAH1コブラ対戦車へり1機が編隊を組んで飛ぶ。また、防府基地の空自練習機。美保基地のC1輸送機が飛来した。
第1空挺団からの3名による空挺降下の後に音楽隊による演奏が行われる。曲目はチャイコフスキーの1812年である。この曲は大砲を使う演奏であるから音楽隊の背後で第13特科隊が105ミリ榴弾砲M1013門を準備。3度の空砲発射と、最後の一斉射での締めをおこなった。13旅団としては初めての事だそうだ(俺も初めて聞いた)
演奏に続いて模擬戦だ。
観閲行進にも使われた広場(?)の右端にある丘を敵が占領したとしてまずはOH1で偵察。それからUH1で空挺を敵の背後に下ろす。バイクと87式偵察警戒車がさらに敵を偵察する(87式が20ミリ機銃を撃っていた)偵察の情報から特科が射撃。(弾着を花火を投げて演出していた)だが、敵は戦車を出して抵抗。これにAH1コブラが出撃して撃破(赤い煙幕出して撤収)さらなる反撃として74式戦車の戦車隊と対戦車隊が出動。これにまた敵は戦車を出す。(この時に12.7ミリ重機関銃の空砲射撃をしていた目の前であったから迫力が凄い)しかし、自衛隊の戦車でまた撃退される。更に施設科が進路を開拓し、(鉄条網を引き込む)火炎放射器で敵の陣地を焼き払い(木と紙で作ったであろうドングリみたいなもの)普通科が前進して射撃。そして戦車が突撃、敵陣に踏み込んで状況終わりとなった。(この時に丘をロシア戦車みたくジャンプ!)
模擬戦が終わると装備展示を見に行く。展示の会場に向かう74式戦車が来客者の間を縫って戦車の前での上官の指示で車体を少しづつ動かし方向転換する様は戦車を動かす苦労を感じる。
また、155ミリ榴弾砲FH70が自走して展示場に入り、隊員4名で固定脚を広げて砲を回し調整する姿は貴重な場面だ。また、展示場の近くでは78式戦車回収車が整備のクレーン車を使いドーザーの爪を車体前面から外し、後部に置く作業が見れた。クレーンで吊し、動かす時も「ストップ」「ちょっと巻いて」と微調整を何回も繰り返していた。これは今まで見た事が無く本当に珍しいものだ(けど、その自衛官にとっては当たり前の事なんだろうけど)
今回は目新しい装備は無いが、改造があった。偵察隊の87式偵察警戒車の砲塔後部に戦車と同じ金網の置く場所が設置してあるのだ。1両だけ。
元々無い仕様を不思議に思い偵察隊の人に聞きました。
葛城「あの部分。(砲塔後部を指す)新しいですね。あれは何ですか?」
偵察隊「あれは戦車と同じで物を置くんですよ。車内じゃ不便ですから」
葛城「なるほど。これは要請して取り付けたのですか?」
偵察隊「申請してもお金のかかる事は通りません。これは小隊独自で作ったんですよ。小隊でお金を集めて」
葛城「そうだったのですか・・・あれは整備科で作られたのですか?」
偵察隊「いえ、小隊には器用な人が居るのでその人が」
葛城「それは凄い」
なんとも涙ぐましいです。前に雑誌で見た89式小銃にグリップを付けるために自費でグリップを買っていたのを思い出したよ。職場改善はなかなか難しいようです。

(今回はデジカメで色々撮影してこのブログに載せようかと思ったんだが、画像が大きすぎて登録出来なかったよ・・・)

最近よく聞き、TBSと一悶着あった音声合成ソフトのイメージキャラの初音ミク。
色んな歌を初音ミクの声に合わせたものが色々あるが、ここでは軍歌を集めてみた。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm1379497
(ハワイ大海戦)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1263596
(大東亜決戦の歌)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1341328
(海ゆかば)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1336923
(婦人従軍歌)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1139226
(初音ミクに軍歌を歌わせてみた)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1177226
(初音ミクのパンツァーリート)

http://www.nicovideo.jp/watch/sm1229475
(紀元二千六百年を歌わせてみた)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1358612
(愛国行進曲)

ニコニコ動画にあったものを挙げてみたが、なんとも右よりにも見えるラインナップだ。
作った人のお陰か、勇ましいと言うよりもしんみりとした優しいものに聞こえるものです。
戦艦長門1
(↑砲塔を旋回させる長門)

 

1944年(昭和19年)10月20日。アメリカ軍はフィリピンのレイテ島に上陸。日本海軍連合艦隊は残るほとんどの主力艦艇を投入した捷一号作戦を発動。レイテ湾の米輸送船団を撃滅する為に出撃した。

だが、レイテ突入を目指す栗田建男中将の艦隊は10月23日に潜水艦によって重巡洋艦「愛宕」と「摩耶」が撃沈。24日にはウィリアム・ハルゼー中将の第3艦隊の空母艦載機によって戦艦「武蔵」が撃沈された。

レイテ湾突入を目前に磨り減る栗田艦隊。「武蔵」が沈んだ後に一旦はシブヤン海を西に反転して空襲をやり過ごす。これを米第3艦隊の偵察機が目撃し、「日本艦隊は逃げた」とハルゼーに思わせた。

だが、栗田艦隊はまた反転。レイテ湾への再進撃を開始した。

ハルゼーを騙した事を知らず戦々恐々とレイテ湾へ抜ける海路で一番狭い、サン・ベルナルディノ海峡を無事通過した。

そして10月25日の夜明け。栗田艦隊は敵艦隊と遭遇する。護衛空母からなるトーマス・スプレイグ少将指揮のタフィ3である。ここに大和以下の戦艦が初めて敵の艦艇に向けて砲戦を挑むサマール沖海戦が始まった。


ここで双方の戦力を比較しよう。


栗田艦隊

戦艦4隻・重巡洋艦6隻・軽巡洋艦2隻・駆逐艦11隻

タフィ3

護衛空母6隻・駆逐艦7隻


単純に比較するとタフィ3は水上戦闘が可能なのは駆逐艦7隻のみ。だが、相手は戦艦4隻を中心にした20隻以上の艦隊。勝ち目が無いように見える。だが実際はどうなっただろうか。


・6時40分前後 双方ともに発見

・6時59分    戦艦「大和」米空母と3万1000メートルの距離で砲撃開始

・7時00分    戦艦「金剛」・「榛名」砲撃開始

・7時01分    戦艦「長門」砲撃開始

・7時03分    栗田中将各戦隊に突撃命令

・7時09分    護衛空母群スコールと煙幕の中に遁走

・7時16分    スプレイグ少将。駆逐艦に突撃命令

・7時30分    重巡洋艦「鈴谷」が米駆逐艦の魚雷攻撃を受けて大破

・7時35分    戦艦「榛名」魚雷回避の転針

・7時57分    戦艦「大和」魚雷回避の転針

・8時00分    栗田中将。全軍突撃せよを命令

・8時10分    護衛空母「ガンビア・ベイ」に初の命中弾

・8時53分    重巡洋艦「筑摩」魚雷攻撃を受けて大破

・8時55分    駆逐艦「ホエール」撃沈

・9時07分    「ガンビア・ベイ」撃沈

・9時11分    栗田中将。追撃中止・北方集結を命令

・9時23分    栗田艦隊追撃中止

・10時05分   護衛空母「サミュエル・B・ロバーツ」撃沈

・10時10分   駆逐艦「ジョンストン」撃沈


戦果

護衛空母1隻撃沈 駆逐艦2隻 護衛駆逐艦1隻 撃沈

損害

重巡洋艦5隻大破


戦艦4隻で攻撃したものの第1の目標である空母を1隻しか撃沈できず、かえって5隻の重巡洋艦を大破させらた(後に5隻とも午後の空襲で撃沈される)

こう見ると栗田艦隊の戦果は芳しくない。では、何故このような事になったのか?

7時16分にタフィ3の駆逐艦が突撃を開始した。これらの駆逐艦は文字通り身体を張って護衛空母を守った。煙幕を展開し、護衛空母を隠し。魚雷を放ち戦艦「大和」と魚雷を併走させて戦場より離れさせて栗田中将以下の艦隊司令部が戦況を把握出来ないようにさせた。また、重巡洋艦数隻を大破させた。
まさに小人が熊に挑むような戦いとも言える。これは米駆逐艦乗員の高い闘志と魚雷の威力による所だろう。これに加えて護衛空母の艦載機も大きな役割を果たした。
タフィ3はレイテ島上陸作戦を支援する為に対地装備しか無く、アベンジャー攻撃機が搭載されていても雷撃は出来なかった。けれども通常爆弾を装備して栗田艦隊を爆撃した。爆弾が無くなっても攻撃するふりをして回避行動を強要し、進路を妨害した。
この海空による妨害で護衛空母をスコールの中に逃がす時間を稼げた。栗田艦隊はこの妨害で1隻の護衛空母しか撃沈できずに終わった。
これを見て栗田艦隊は米軍に翻弄された愚鈍な艦隊かと思うかもしれない。だが、「武蔵」の撃沈で艦載機の威力を前日に目の当たりにした栗田艦隊に爆弾を受けてでも追撃するべきだったと言うのは酷だ。
このサマール沖海戦では米駆逐艦の勇戦があったが、栗田艦隊の駆逐艦はどうだったか。戦艦と重巡洋艦が前進してタフィ3を攻撃する一方で軽巡洋艦と駆逐艦からなる水雷戦隊は後から追従して行く形になっていた。これは捷一号作戦の目的であるレイテ湾突入を控えて駆逐艦の燃料を使わせない為に突撃させず艦隊の後方に居た。また、損傷艦の護衛をも行い栗田中将は駆逐艦を使わず戦艦と重巡洋艦の砲撃で敵空母を撃沈しようと試みたのだ。
この駆逐艦を全面に出さない作戦が米駆逐艦が活躍できる舞台を作り上げたと言える。午前8時には栗田中将は全軍突撃せよを命じて水雷戦隊は戦場へと出た。軽巡洋艦「矢矧」以下第十七駆逐隊が敵との距離1万メートルで魚雷を発射した。(魚雷到達予定の時刻に米空母に水柱が立ったとされる)

栗田艦隊はレイテ湾突入を控えて戦力の逐次投入とも言える戦い方になってしまった。だが、これは航空支援が無い傷ついた1個艦隊の限界とも言える。目の前の敵を撃滅させたいが当初の目標を達成せねばならない。このジレンマに混乱する戦場で栗田中将と参謀達は悩まなければならなかった。

サマール沖海戦。それは戦闘を重ねて作戦目標を前にした栗田艦隊にとっては全力発揮が出来なかった余裕無き戦いであった。


タイコンデロガ巡洋艦

 

「敵機4機接近!7時方向2機。10時方向1機、2時方向2機!」

空母「アクア」の艦隊に属する巡洋艦「サン・ミケーレ」のCICでは迫る敵機の状況をオペレーターが次々と報告する。それを艦長は黙って聞いている。この艦長。ネオ・ヴェネチアでは郵便局で働いていた人物で、「長老」と呼ばれた男であった。「長老」の威厳はそのまま艦長の威厳としてこの場にあった。

「対空戦闘!5インチ砲、VSL射撃用意!」

「サン・ミケーレ」の砲雷長を勤めるのはアトラ。ネオ・ヴェネチアではウンディーネを目指していた少女であったが、今では巡洋艦の火力を管理し、指揮する立場になっていた。

「艦長。スタンダードミサイルで一度に撃墜します」

「うむ」

アトラは「サン・ミケーレ」のイージスシステムが1度に12の目標に対処出来る事から5機全てを照準して一気に決着を着ける気で居た。

「攻撃諸元入力完了!」

オペレーターの報告にアトラはCICの大型のスクリーンを見据える。もしもあの敵機がハープーンミサイルを搭載しているなら既に発射しているだろう。(射程124km)だが、敵機は空母「アクア」より100km以内の距離に入っている。敵のミサイルはエグゾセであろう。だが、それでもエグゾセは最大射程72km。「サン・ミケーレ」が搭載するスタンダードミサイルSM2は射程70km。有効射程を考えればほぼ互角のタイミングでミサイルを撃つ事になる。

(けど、ここは艦隊。他の艦のミサイルをも潜って来れるかしら)

計算の中で緊張と余裕が混ざった感情でアトラは決断する。

「VLS開放!撃て!」

「サン・ミケーレ」の前後にあるVLSからスタンダードミサイルが煙を盛大に吐いて発射する。彼我の距離は70km。マッハで飛行する敵機の速さを読んでの事だ。
他の駆逐艦やフリゲート艦もスタンダードミサイルを発射してジャギュアを攻撃する。

「10時方向の敵機を『カスッテロ』が撃墜!」

「7時方向の敵機1機を撃墜!」

スクリーンにはミサイルの表示がジャギュアを表す表示と重なると消えて。それによって撃墜されたと分かる。アトラには見慣れたものだが、戦場らしくないとも思える場面だ。艦の外では自分の指示で放たれたスタンダードミサイルが誘導されながらジャギュアに向かう。ジャギアは必死にチャフやフレアを撒き散らしてミサイルを回避するが、次々に迫るミサイルに捕まり、爆砕する。そんな光景が展開されているが、CICでは想像するしかない。そしてその光景を生まなければこちらが敵のミサイルの餌食になる。知性を持ち、高い技術を駆使しても弱肉強食に変わりは無いとアトラは思えた。

「2時方向の敵機。『リアルト』1機撃墜!」

着々と続報が入る報告。しかし、アトラは気を揉む。

(残るは2機。しぶとい)

7時方向と2時方向の敵機が1機づつがスタンダードミサイルを潜り抜けて艦隊に迫る。

「シースパロー射撃用意!それとCIWSも!」

アトラは迫るジャギュアに近接戦闘を覚悟した。


生き残ったジャギアは海上を低空で空母「アクア」目がけて進む。まずは、眼前の城壁とも言える艦隊外周の駆逐艦やフリゲイト艦を越えねばならない。

「突き進む!」

別方向から1機づつ向かうジャギュアのパイロットの士気は高かった。ここまでの障害をなんとか越えて来たのだ。刺し違えてでも「アクア」にエグゾセを叩き込むのだと。
駆逐艦やフリゲイト艦は食い止めようと槍衾のごとくシースパローミサイルを放つ。しかし、残るチャフを全て使いミサイルの網から逃れる。だが、2時方向から迫るジャギュアはそこでシースパローの餌食となってしまった。

とうとう残った1機は駆逐艦「カスッテロ」の上空を飛び越え、そこからエグゾセミサイル2発を発射した。
そこでジャギアの運が尽きた。フリゲイト艦「サン・ポーロ」から放たれた76ミリ砲弾の炸裂を受けて海面に叩き落とされた。

「ミサイル2基「アクア」に接近中!」

「主砲撃て!弾幕で撃墜!」

「サン・ミケーレは艦の前後にあるMk45 127ミリ単装砲の連射でエグゾセを撃墜しようと試みる。

自動装填で砲弾が送られ間髪入れずに放たれる砲弾。そして、エグゾセの進行方向に生まれる砲弾の炸裂の黒い弾幕。これで落ちろとアトラは祈る。

「機関全速!『アクア』と並べ!」

ここまで沈黙していた艦長が唐突に命令を下した。それにアトラや周囲が驚きつつも「サン・ミケーレ」は4基のガスタービンエンジンを唸らせ、8万馬力の足で「アクア」の左舷真横に付けて併走する。

「砲雷長!何としてでも撃ち落とせ!」

「はっ!」

艦長の喝にアトラは気合いを入れ直す。我が「サン・ミケーレ」が「アクア」を守る最後の盾なんだと。

「ミサイル距離300メートルまで接近!」

「CIWS迎撃!」

CIWS20ミリ機関砲ファランクスが起動する。6銃身のガトリング砲がチェンソーに似たけたたましい音を響かせながら毎分3000発~4000発の砲弾を撃つ。文字通りの槍衾な弾幕を艦の全面に展開させる。

「一基残らず撃ち落とせ!」

アトラはアドレナリンが自分の中で弾ける思いを感じつつ主砲とSIWSの迎撃を見守る。エグゾセ1発がCIWSの弾幕に呑まれて炸裂した。

「よし!」

だが、残る1発が弾幕を越えて「アクア」に尚も向かう。

「我が艦を盾にする!割り込め!」

艦長の命令で瞬時に「サン・ミケーレ」は「アクア」とエグゾセの間に割り込む。

「ミサイル命中します!」

「緊急連絡!総員衝撃に備えろ!」

アトラはこれから自分の居るこの艦にミサイルが確実に命中する事で瞬時に冷水を浴びる様な恐怖を感じた。

エグゾセは「サン・ミケーレ」の左舷中央部の上部構造物に命中した。

「左舷上部構造物に命中!」

「火災発生!消火活動中!」

「負傷者多数!衛生科急げ!」

命中した直後から悲鳴の様に被害報告がCICに届く。

(あゆみと杏は…)

アトラは「サン・ミケーレ」に乗る2人の乗員が心配になった。2人ともネオベネチアでは同じシングル同士でトラゲット(渡し船)を漕いでいた仲である。

(無事であれば良いけど)

アトラは心配しつつも次の敵が来た時に備えている他に無い。


一方。そのアトラが心配していた2人。あゆみと杏は火災現場に居た。エグゾセの165kgの高性能火薬の炸裂が、ミサイルの残燃料に引火して火災を引き起こした。この場であゆみは、応急長として消火活動を指揮し、杏は衛生員の1人として火災現場で倒れる兵の応急処置と医務室への搬送をしていた。

「おい!杏!ここにも負傷者だ!」

あゆみが1人の負傷者を発見し、杏が駆け寄る。負傷兵は頭から血を流し、服は破れて擦り傷だらけだ。

「やはり…噂は…本当だ…」

「?」

「喪服の女が…俺に…手招きを…」

そこまで聞いてあゆみは理解した。この艦のジンクスであるサン・ミケーレ島と喪服の女の伝説だ。その女は処刑される前にサン・ミケーレ島で弔って欲しいと願ったが墓地の過密状態で実現しなかった。それから喪服姿の女が現れてはサン・ミケーレ島に連れ行って欲しいと言う。それを叶えると連れて行った本人が神隠しにあってしまうと言う伝説だ。
艦名が艦名だけに乗員の誰もが「この艦は沈むかも」と噂にしていた。

「まさかウチが喪服の女か?冗談じゃない、しっかりしろ!」

あゆみは意識が遠のく負傷兵を叱咤する。

(喪服の女が手招きだって?ウチが応急長で居る限りは沈ませないさっ)

あゆみが喪服女の伝説を振り払っている時に杏が来た。

「もう…俺はダメだ…」

と言う負傷兵に杏は。

「こんなしっかりした身体してるんですよ。そんな弱虫じゃ喪服の女にも嫌われます」

と淡々としながらも励ます。

「頼むぞ」

「あゆみちゃんも頑張って」

巡洋艦「サン・ミケーレ」。火災と闘い、ジンクスに打ち勝つ戦いは始まったばかりであった。

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自己紹介:
某掲示板では呉護衛艦隊または呉陸戦隊とも名乗る戦車と眼鏡っ娘が好きな物書きモドキ
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