[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
なんとストッキさんはバイクで全国を行脚して「終身刑」制定の運動をしているのだ。
ニュースの特集では3度目の全国行脚だった。何故にここまでするのか?
その契機となったのがストッキさんの自宅を放火されて妻と12歳の娘を失った事からだ。
犯人は竹山祐二(37歳)で、ストッキさん宅以外も放火を繰り返していたという。放火の目的が金銭目当ての窃盗と、うさ晴らしだという。ストッキさんの家族は犯人のうさ晴らしで殺されてしまったのだ・・・。
この事件の裁判では無期懲役の判決が下った。過去にも放火で服役していてまた再犯した上に2人も殺して無期懲役。
日本での無期懲役は「期限が無い懲役」で死刑に次ぐ刑だとされるが、10年で仮釈放される事もある(平均では25年で仮釈放)死刑に次ぐ刑としては軽いと思われるものだ。
日本の刑法では、殺人罪だと(刑法第二十六章殺人罪)199条(殺人)で死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。202条(自殺関与および同意殺人)で7年以下の懲役となる。この日本の刑法に照らすなら10年以上の懲役は重いものだとなるが、遺族の感情は治まらない。
刑期を終えて悔い改めて生活する人もいるものの、ストッキさんの事件の様に出所してからの再犯で悲劇に遭うケースを考えると終身刑も必要だと考える。
つい、先日判決が来年に決まった光市母子殺害事件の差し戻し審で遺族の本村洋さんは「死刑が日本の最高刑であるからそれを求める」と記者会見で語ったと記憶する。遺族からすれば犯人に対する唯一の報われる手段が刑が科される事である。死刑で無くても起こした犯罪を後悔させる大きな刑を遺族は求めているのだ。その答えとしてストッキさんは「終身刑」を提案しているのだ。
ストッキさんの案では仮釈放無しのものである。つまり、終身刑判決を受けた被告は残る生涯を刑務所で過ごすのだ。
終身刑を導入しているアメリカの場合は、恩赦でしか釈放できないのと、完全に釈放無しの2つのタイプがある。これは死刑制度を廃止した州が終身刑を最高刑にしているケースでもある。
日本での終身刑の制定は導入するべきだと思う。現在では凶悪犯罪が起きて裁判になるごとに死刑の是非が問われている。これは犯罪者とはいえ、命を絶つという人権問題が絡むからだ。この容易に決着をみない死刑制度の存続か廃止かの論議よりも、この「終身刑」を採用する方が良い。
http://www.geocities.jp/syomeiundou/syomei.html
(日本に終身刑を)
http://www14.atwiki.jp/akiramenai/pages/34.html
(ジャーナリスト宣言@Wiki)
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=106574
(紀伊民放より田辺市長に終身刑制定の協力を求めるストッキさん)
それは冬の日の事である。
「学校の屋上に女子の死体があります!」
夕方にかかったこの110番から10分も経たない内に現場となる榊野学園に近くの交番から来た警官をはじめ自動車警邏隊のパトカーが到着する。彼らは学園の教頭に案内されて校舎の屋上へ案内される。
そこで死体となった少女と対面しつつ現場保存を始める。幸いに屋上であるから出入り口だけに立ち入り禁止を伝える黄色いテープを張るだけで済んだ。後はすぐに来る鑑識や捜査員を迎える準備、車両の乗り入れるスペースの確保と野次馬となった生徒達を抑える仕事を始めた。
こうして整えられた現場に原巳浜署刑事課の野瀬警部補と高町巡査部長が到着した。
冬の夕方は日の入りが早い。野瀬と高町が来た時には通報から10分以上しか経っていないが夜の暗さが濃く茜色の夕日が僅かに残るだけである。
警官とパトカーが来た事で生徒がまだ野次馬として校内やグラウンドに残り物珍しそうに野瀬と町田を見ている。携帯電話のカメラで2人は撮られる事もあった。中にはマスコミから取材を受ける生徒も居る。
そんな喧騒を抜けて校舎の屋上へ向かう。先に来ていた鑑識係が屋上の四方から何か証拠を探そうと作業をしている。その中央には仰向けに倒れる少女の遺体がそこにある。
「被害者はこの学園の生徒で西園寺世界さん。鑑識の報告では頸部(首)を斬られて上行大動脈からの出血による失血死が死因だそうです」
高町が最初に到着して事情を聞いていた警官と鑑識の報告を野瀬に伝える。
「首斬るだけじゃ済まずにここまでやるとはな…」
野瀬は世界の遺体を見ながら呟く。世界の遺体は下半身が縦に切り開かれている。
「まるで切り裂きジャックですね」
「だな、臓器まで取っていたらそうだ」
切り裂きジャック。19世紀イギリスのロンドンで売春婦5人を殺害した犯人の事だ。被害者は殺された後に肝臓や子宮・膀胱を抜き取られた。世界の遺体は臓器こそ抜きと取られて無いが、身体の内部を開くような切り方に町田は似ていると思ったのだ。
「それにしてもむごい事をするものだ。犯人は猟奇を好む異常者か被害者を憎む者の犯行だろうな」
野瀬は犯人がどんな人間か仮説を立てた。
「この屋上で殺したとなると、顔見知りでしょうね」
「そうだろう。こんな人目をはばかる所で会うんだからな」
野瀬は屋上の周囲を見渡す。既に日は沈み夜の暗闇が広がる。鑑識が居るものの、野瀬の目には誰も居ない静かな屋上の風景が見えた。そこに立つ西園寺世界。彼女は怯えながら殺されたのか?それともいきなり不意を突かれて殺されたのか?犯人は男か?女か?野瀬は現場からイメージを膨らませるが決定的なものは見えない。
原巳浜署に「榊野学園女子生徒殺人事件特別捜査本部」が設置された。
通報があった翌日。ある程度の情報が集まり捜査会議が開かれる。
「殺害された西園寺世界さんは司法解剖の結果。通報の日の前日夜に殺害された事が判明しました。凶器は切り口からノコギリか糸鋸だとの事です」
捜査会議は司法解剖の結果から始まった。凶器の異常さに誰もが驚く。
「殺害現場では、包丁が見つかっていますが付着している血液は西園寺さんとは違うものだと判明しました。それに包丁の指紋は西園寺さんのものです」
鑑識が報告する。殺害現場には1本の血まみれの包丁があった。それは世界の遺体の側にあり最初はその包丁での犯行だと思われていたが、事実は不可解な謎を生みつつある。
「よく分からん事件だな。ノコギリで殺されたが別人の血が付いた包丁があるとわな」
刑事課の課長がぼやく。確かにそうだ。1本の包丁がこの事件の真相がまだ深く見ない所にある事を示している。
「聞き込みの情報は?」
管理官の警視が並ぶ捜査員に向かって聞く。それを町田が答える。
「生徒からの聞き込みでは西園寺さんには男子生徒との交遊関係でトラブルを抱えていたそうです」
これに誰もが「やはり」と言う反応をした。
「その男子生徒は同じクラスの同級生の伊藤誠。事件の前まで付き合っていたようですが、どうやら西園寺さんを妊娠させていたらしく。その事で言い争いをする2人の姿が目撃されています」
町田の説明に一部の中年捜査員が「これだから最近の若者は~」と小声で隣の捜査員に言った。
「となると、伊藤誠が妊娠した世界に言い寄られた事を逆恨みして殺害したという事か?下半身を裂いたのは本当に妊娠してるか確認する為と」
課長が事件の辻褄を合わせようとまとめる。
「その伊藤誠ですが、もう一人交際していた人がいます。同級生ですが別のクラスの桂言葉。どうやら西園寺さんと付き合う前から桂さんと交際していたようです」
「ほお~二股か」と捜査員の誰かがはやし立てる。
「三角関係になった事で嫉妬が生まれて桂さんが西園寺さんを殺害すると言う事も考えられます」
野瀬が言うと課長も管理官も頷く。
「今回の事件は伊藤と桂の2人が被疑者か。その2人を重点的に捜査だな」
課長が捜査方針を決めようとした時、1人の刑事が立ち上がる。
「実はその、伊藤誠ですが。本人の自宅で大量の血痕が発見されたんです」
昨晩。伊藤誠の自宅より通報があった。
通報したのは看護師をしている伊藤誠の母親である。仕事から帰り自宅に戻った母親は職場でよく嗅ぐ臭いを感じた。血の臭いだ。
それを不審に感じて母親は臭いの元を探る。それは息子、誠の部屋であった。そこを開けた彼女は信じられない光景を見る。床が血だらけなのだ。
けれども血が流れた元が無い。ただ青いカーペットを染める血の斑紋があるだけだ。
これは世界の殺人事件とは別に扱われたが、伊藤誠が捜査線上に浮かんだ事で同一事件として扱う事となった。
「血痕の分析結果は今週中に出ます。それと指紋の採取で伊藤親子以外に西園寺世界のものと別の誰かの指紋も採取しました」
伊藤誠宅での事件を担当した刑事が説明する。
「アパートの住民の話ではつい最近、伊藤さんの部屋から女の怒鳴り声が聞こえたそうです。それと西園寺さんが殺害された当日と前日の夜には西園寺さんがアパートに来ている事が判明しました。また、同じく桂さんもです」
この説明で誰もが不明な人物の指紋が言葉のであると確信した。
「問題は伊藤誠が何処に居るかだ。血痕の事を聞くに彼は殺害された可能性が高い」
管理官がこう言うと課長も「そうだな」と同調する。
「捜査方針は。伊藤誠の行方を捜す事と桂言葉に会って事情を聞く。これで決まりだ」
方針が決まると会議は終わり捜査員達は自分の仕事をするべく会議室を出る。
「高町。桂言葉の自宅に行くぞ」
野瀬は高町を連れて被疑者の1人である言葉に会うべく高町と共に行く。
「帰ってきてない?」
野瀬と高町が桂家を訪れると母親から
「私の娘がまだ帰って来ていないんです。つい昨日捜索願を出した所ですよ」
と言われた。これが管轄の違いから来る弊害か、情報が刑事課に届かなかったのだ。
言葉は事件の翌日には彼氏の誠と共に桂家が所有するヨットでクルージングをしていたそうだ。だが、そのクルージングから戻らないと言う
野瀬は代わりに母親から言葉について聞き出す事にした。
最近の様子や誠や世界の事を。
「娘が犯人だとお思いですか?」
事件を知っている母親は野瀬に苛立っていた。我が子を被疑者にされれば怒りを持つのは当たり前だ。
「いえいえ、これは娘さんが犯人では無いと言う確認作業ですよ。それをはっきりさせれば疑いは晴れます。それまではどうか無礼をお許し下さい」
野瀬が丁寧な言葉で感情が高ぶりつつある言葉の母親をなだめた。
「それなら良いのですが…」
それから聞き出した情報は事件解決に繋がる事では無かった。誠は言葉の彼氏だという事は知っていても、どんな人間かは詳しくは知らないようだ。世界の事は全く知らない。言葉の事は最近夜に出歩く事が多いと言うのが事件と繋がるかもしれない言葉の心理状態を示す情報とはなった。
「まさかヨットで逃げたんですかね?」
高町が桂家を後にして言った。
「有り得なくは無いが、だとしたら外見に似合わず大胆な事をするお嬢さんだ」
野瀬はこう言うが過去の経験からすれば虫も殺さないような温厚で優しい性格だという人間が大胆な行動を起こすのだ。
「まずは、早く海保がヨットを見つけて欲しいものだ」
捜索願を出された後で警察から海上保安庁に捜索の要請が出されていた事が言葉の母親から伝えられた。今は海の上に居る被疑者が戻るのを待つしかない。
彼らはアロヨ大統領の辞任を求めている。
フィリピンではアロヨ大統領の辞任を求めて過去にも青年将校がホテルにに立て籠もる事件が起こり。昨年2月には軍のクーデターが発覚。非常事態宣言が発令されてクーデターは防がれた。
今回の立て籠もりはその2月のクーデター未遂で逮捕されて裁判中の2人が首謀者であった。BBCニュースでは裁判での審議が終わると兵舎に帰るそうだが、その兵舎の位置がマニラの商業地区が隣にあり、首謀者の2人は裁判所からそのままホテルに向かったそうだ。また、警備の兵士が同調してそのままホテル占拠へ共に向かったと言う。
政府は即座に軍を投入。1500人と装甲車3両を投入。装甲車でホテルの内部を射撃し、(玄関前に横付けして銃撃する映像が見えた。更に玄関内部へも突入)特殊部隊が催涙ガスを使用しながら突入した。これに首謀者の2人はすぐに投降した。
ホテルには海外のマスコミが滞在していた事からBBCでもCNNでもライブでこの事件を報じていた。(ホテル内で置きっぱなしのカメラからの映像をBBCもCNNも流していた)
先に書いたBBCでのホテル立て籠もりまでの流れだとこの事件はその場の思いつきで実行したような感がある。何の準備も無しで行われた為に即座に鎮圧されるという結果になっている。
こうなると、この先にも軍のクーデターは相次ぎそうな気がしてならない。掌握し切れない軍と言う不安材料を抱え修羅場を越えたアロヨは結構強い国家指導者なのかもしれない。(良い施政かどうかは別だが)
「アリシア。アテナ。燃料と残弾は?」
晃はF15との空戦を終えてアリシアとアテナの機体の状況を聞く。三大妖精小隊のF14は中射程のスパローミサイル3発。短射程のサイドワインダーミサイル2発に長射程のフェニックスミサイル2発を装備して出撃していた。
「こっちはスパローもサイドワインダーも1発づつ。フェニックスは2発あるわ」
とアリシア。
「スパローは無し。サイドワインダー1発。フェニックス2発」
とアテナ。晃は機関砲しか使っていない為にミサイル全てが残っている。
「ティフィーネとロッチャは空戦空域に向かえ。敵戦闘機を撃退せよ」
空母「アクア」からの新たな命令で2個小隊のF14が「ネオ・ヴェネチア」の戦闘機隊を援護すべく向かう。
(何故敵の戦闘機は残っているんだ?もう護衛すべきジャギュア攻撃機の残存は離脱したのに)
晃は疑問が浮かんだ。当初の目的であるジャギュア攻撃機を護衛する任務が敵戦闘機にあると考えていた。だが、今は護衛任務を放棄したか変更して粘り強く空戦を続けている。
(また陽動か!?)
最初の空戦の事を思い出した晃。こちらの戦闘機を釘付けにすべく敵は戦闘機同士の空戦を仕掛ける。その間に攻撃機を突入させて艦隊に攻撃をした。
(だとしたら何処から来る。今度こそは…)
晃はコクピットの周囲に広がる空を敵の姿求めて目配りをする。だが、肉眼では見つかるものでは無い。思わずレーダーのディスプレイが見れる藍華に新しい敵の反応が無いか聞きたくなった。けれども今の藍華は座席に座るだけしか出来ない状態だとすぐに思い出して口に出かけた言葉を飲み込む。
(ここで暁とウッティーが戦っているの…)
晃がまだ姿が見えない敵を探そうとしている時に藍華は目の前のTIDのディスプレイを見つめていた。
そこには一カ所だけ記号が入り乱れる異様な箇所があった。そこが暁とウッティーら「ネオ・ヴェネチア」の戦闘機とティフィーネ小隊・ロッチャ小隊が戦う空域である。
戦術記号の1つ1つには誰かが乗って戦っている。そのどれかによく知る人たちが居る。近くに居て何故か遠くに感じる寂しさを藍華は感じた。
それは自分の乗るF14の横を飛ぶ灯里達に目の前の晃対しても同じ感情を抱いた。同じ場所に居て何も出来ない事が疎外感を生んでいた。
(抜け出したい。何も出来ないのにここには居られない!!)
藍華は泣き出しそうな衝動を抑えるように右手をTIDディスプレイに置き崩れそうな自分を支える。
「!!」
その時。藍華は体中に電気が走ったと思える衝撃を受けた。何かが自分の中に入り込む。何かを見せようと脳へと電流は走る。
(見える…何かが記憶に刻まれる)
脳裏におぼろげに出てくる記憶。それは段々と鮮明さを増す。光景も声や音も鮮明になると編集された映像みたいに断片的な記憶が次々と頭を巡る。
「我がアクアはマンホームより独立する!」
ネオベネチアのサン・マルコ広場で集まる群衆へ向けて演説する政治家の姿があった。それに歓喜で応える群衆。それを藍華は晃や灯里・アリシア・アリス・アテナと共に遠くから見ていた。
「これからが大変だぞ。これから…」
晃はぽつりと醒めた口調で言った。この意味を藍華は分からずにいた。
火星をテラフォーミングして人類が入植したアクア。一方で人類を送り出した地球もといマンホーム。マンホームは開拓が終わり経済が安定しているアクアに様々な税を導入してマンホームで深刻化する経済の悪化と財政の不足を補おうとした。これにアクアの住民は誰しも反対した。あたかも植民地のごとく搾取しようとするマンホームに怒りが頂点に達した。これにマンホームはアクアに圧力をかけ、アクアの政治にマンホームからの官僚や議員を送り込むなどしてアクアを完全な管理下に置こうとした。このやり方にアクアでの不満は頂点に達して独立へと至った。
「とうとう来たか…」
姫屋で晃と藍華は外の様子を見ていた。それはカーテンに隠れながらそっと見ていた。
「あれがマンホームの?」
「そうだ。このアクアを占領する気だ」
姫屋の前には装甲車を連ねて進むマンホームの軍隊が見えた。マンホームはアクアを政治的な支配から軍事力を行使しての圧政を敷こうとしていた。
「私はしばらくここを離れる」
晃がそう言うと藍華はその理由が分かった。
「知ってますよ私。アクア独立義勇軍に加わるんですよね」
「そうか…なら話は早い。私が居ない間はこの姫屋を頼むぞ。お前は跡継ぎだからな」
晃が藍華に向き直って藍華に言う。
「晃さん。私も独立義勇軍に入ります!」
「藍華!意味を分かって言っているのか?もしかしたら死ぬかもしれないのだぞ!」
晃は必死に藍華を説得する。えれども藍華の決意は変わらない。
「こんな事になったらウンディーネに仕事は無いですよ。姫屋は当分閉店になるんですから。それなら晃さんと灯里やアリシアさんと共に行きたいです」
「藍華…知っていたか」
晃は灯里とアリシアが独立義勇軍に入隊するのを知っててあえて藍華に知らせなかった。戦場に藍華を行かせたく無かったからだ。
「これ以上私が何を言っても無駄なようだな」
晃は藍華を説得するのを諦めた。
「では行こうか。これからは何倍も厳しいぞ」
「はい、晃さん!」
こうして藍華と晃は独立義勇軍に入隊する事になった。
マンホーム軍の監視を避けるために深夜2人は姫屋を出て灯里・アリシアと合流する。
「藍華ちゃんだ」
灯里が藍華を見つけると嬉しそうに駆け寄る。
「私だけ留守番なんて出来ないわよ」
と藍華も灯里へ笑顔を浮かべて言った。
「私も留守番なんて出来ませんよ先輩」
突然の声に4人は驚いたが、そこには見知った顔が居た。アリスとアテナだ。
「私とアリスちゃんも一緒に行くよ」
アテナがはっきりとした声で言った。
「これでみんな揃ったわね」
アリシアがこう言うと4人は歩き出そうとした。そこへ慌ててやって来る足音が近づく。
「待ってくれ、オレ様達も行くぞ」
暁とウッティーが息を切らせて駆けて来た。
「暁。お前サラマンダーの仕事はどうした?」
暁はサラマンダー(火炎之番人)は浮島でアクアの気候制御を行う職業だ。暁はそれを放り投げて来たのである。
「アリシアさんが独立義勇軍に行くと聞いてな。男として黙っておれまい」
暁が当然だと言う強気な態度で晃に答えた。
「そろそろ行かないと時間が」
アテナがぽつりと言う。
「そうね。独立義勇軍の便が出ちゃうわ」
アリシアもこう言うと集まった6人は歩き出したその姿に戦争へと向かう恐怖はない。親しい仲間と共に旅に出るかのような清々しさが彼ら彼女らにはあった。
「行ってきますネオ・ヴェネチア。少しの間のお別れだけどまたすぐに戻ります。また帰る日まで…」
灯里がネオ・ヴェネチアの街々を眺めながら別れを告げる。民家の灯りがどこか灯里達を見送る人
々の様に思えた。この温もりのある街にまた戻ろう6人は心の奥で誓った。
「恥ずかしい台詞禁止」
「ええ~」
灯里に藍華が優しくいつものツッコミを入れる。
(これで私はここに居るんだ…)
藍華は頭を巡った記憶からこの世界のアクアと自分の事について知った。
それは全く分からなかった目の前の機器の扱い方や乗っているF14戦闘機についても瞬時にデーターを取り込んだように脳内に入った。
(これで私も頑張れる!)
自信を取り戻した藍華は晃に言った。
「晃さん。心配かけてしまってすみません。もう大丈夫です」
「本当か藍華?」
「はい、いつでもミサイルが撃てます。それにTIDもちゃんと把握してます」
このやり取りを終えると晃は藍華が復活した事を確信した。
「燃料はまだある。新たな敵が来れば頼むぞ」
「はい、晃さん!」
NHKのスペシャルドラマとして司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」がクランクインしました。
「坂の上の雲」は秋山兄弟(秋山好古・秋山真之)を主人公に日露戦争を書いた作品である。
原作は読んで無いけど、「日露戦争」がドラマで見れる事に期待しているのですよ。(戦闘や戦略のシーンがちゃんとあるか疑問が大きいけど・・・)
映画「二百三高地」で日露戦争に興味を持った自分としては少し心配ながらも期待が大きいのだ。
さて、主人公の秋山兄弟だが。
兄の好古は陸軍の騎兵将校とで日露戦争では第一騎兵旅団を率いて黒構台攻防戦を騎兵でありながら防御戦を戦い抜き、永沼挺身隊と呼ばれる長距離の後方攪乱部隊を送り込む活躍をした。
顔つきとヒゲからドイツの軍人メッケルにそっくりと言われ、酒豪でもあったが、それで重度の糖尿病になってしまったという。
弟の真之は海軍に入り、日露戦争では連合艦隊作戦参謀となり日本海海戦ではロシア軍バルチック艦隊を迎え撃つ作戦を立案し、「天気晴朗なれども波高し」の連合艦隊出撃における名文を残している。
晩年は仏教や神道などの宗教研究を行い亡くなる前までに般若心経を唱えていたという。
まさに日露戦争を語る上で重要な場面に居たこの兄弟。ドラマとしては良い題材であろう。
だが、果たして黒構台や日本海海戦は上手く描かれるのだろうかなあ・・・