架空戦記小説と軍事の記事を中心にしたブログです
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(↑雲龍級空母「葛城」)
今回は兵器紹介の第1弾として日本海軍が太平洋戦争末期に建造した空母「雲龍」級を取り上げる。
第1弾なのにマイナーと言える艦ではあるが、私のハンドルネームの由来でもある訳で第1弾には相応しいのでは思いました。(本当はエヴァのお気に入りキャラである某作戦部長と名前が同じという事もある(笑))
日本海軍はミッドウェー海戦で空母4隻を1度に失った。その大きな損失を埋めつつ空母戦力を拡充させるために改⑤計画(第五次海軍軍備充実計画の改定版。初めの計画では「大鳳改」級空母2隻・「雲龍」級1隻の空母を建造する予定)を立ち上げた。計画では「改大鳳」級5隻・「雲龍」級15隻を建造する事となった。
数においては日本海軍空母戦力の中心へと「雲龍」はなるはずであった。
「雲龍」は既存の「飛龍」級空母を元に設計された空母である。これは飛行甲板が装甲であり、飛行甲板と艦首が一体化している新機軸の「大鳳」級とは違い戦時急造を意識したのが「雲龍」級である。設計から新たにすると図面を引く時間だけでは無く水槽で何度も船型試験など幾つもの試験と改善に時間を費やさねばならない。だから既存の艦艇を元に戦訓を取り入れて建造されたのが「雲龍」級だ。
「飛龍」と「雲龍」の違いは「飛龍」では艦橋が左舷にあるのを「雲龍」では右舷に変え(艦載機の発着艦に悪影響があるため)エレベーターも3基から2基に減らされた。これは運用上飛行甲板中央部のエレベーターは必須では無い(後部と前部の2基で十分)と言う意見を取り入れたからだ。これは資材や工数の削減というメリットを与えた。(ただしエレベーターは新型機の大型化に備えて大鳳級の14メートル四方のものを採用)また火災対策として左右両舷に空気取り入れ口を設け、泡沫式散水装置が格納庫に設置されて格納庫の火災も石鹸水のシャボン玉で空間全体を包み込む仕掛けを施した。このように戦場で得た戦訓が「雲龍」には盛り込まれたのだ。
また機関は「飛龍」と同じく8基の罐室と4基のタービンから得られる機関出力15万2000馬力で34ノットを発揮したが、「葛城」は機関の生産が間に合わない為に駆逐艦「陽炎」級の罐とタービンを搭載した。この為に機関出力は10万4000馬力に落ちて2ノット遅い32ノットとなった。
こうして既存の設計に改善を加えた「雲龍」であったが、肝心の空母としての活躍は全く無かった。1番艦「雲龍」は昭和19年8月6日に横須賀で、2番艦「天城」は8月10日に長崎、3番艦「葛城」は10月15日に呉で竣工したものの6月のマリアナ沖海戦で日本海軍の空母だけでは無く、再建された母艦航空隊も壊滅状態となっていた。(その後母艦航空隊である第601航空隊は再建されたが別の空母に乗せられたり、フィリピンに送られ、本土から硫黄島方面へと特攻出撃したりと基地での航空隊となってしまった)こうして移動出来る航空基地である空母の特性は乗せるパイロットの不在(空母のパイロットは高い技量が必要だが、昭和19年末では未熟なパイロットが多かった)と言う事態に全く生かせない事となってしまった。
しかし、日本海軍も空母を遊ばせる事はさせずになんとか使おうと考えたが本土まで迫る圧倒的な米機動部隊に未熟なパイロットを乗せる事になる空母や燃料不足の要因が有効な作戦を立案し実行させる術を失っていた。けれども「雲龍」級3隻と残存の空母2隻と共に特攻機を乗せて出撃する「神武作戦」が計画された。だがこれも実行される事は無かった。
航空機の無い空母は輸送艦として使われた。「雲龍」はフィリピンへのロケット特攻機「桜花」と陸軍空挺部隊を乗せて初めての出撃をしたが、尖閣諸島沖で米潜水艦の雷撃を受けて「桜花」が連続して爆発し、船体の前半分を失ったと言われる。魚雷と「桜花」の爆発で「雲龍」はほとんどの乗員の退去を許さない早さで沈んだ。
残る「天城」と「葛城」は呉軍港の沖に停泊したまま作戦に就く事は無く「天城」は昭和20年7月24日の空襲で左舷24度に傾き、そのまま終戦を迎える。「葛城」は三ッ子島と同化する偽装が施されたが、合計4発の爆弾を受けて飛行甲板が大きく変形したが航行可能な状態で終戦を迎える。そして戦後は復員船となった。
戦時急造の空母である「雲龍」級は他に「笠置」・「阿蘇」・「生駒」の3隻が建造中であったが、「笠置」は8割が完成し、「阿蘇」と「生駒」も上甲板が完成していたが放置さてれ竣工する事はなかった。
こうして期待を持って建造されていた「雲龍」級は戦局の悪化と海軍航空が基地航空隊重視にシフトした事から全く能力を発揮せずにその生涯を終える事になったのであった。
<「雲龍」級性能>
基準排水量 17480トン
全長 227.4m
速力 34ノット(葛城は32ノット)
搭載機 53機
武装 12.7センチ高角砲6基
25ミリ三連装機銃22基・25ミリ単装機銃30基
12センチ噴進砲(ロケット砲)6基
調べるにつれて結構良い性能がある空母であると認識出来る空母です。ですが、何とか乗せれる航空隊があって実戦投入出来ても初陣はレイテ沖海戦。小沢艦隊の囮役の一員となって沈んでしまうかもしれないし、「神武作戦」でも特攻機を発進させるなど活躍とは言い難い姿になるかも。こうなると「雲龍」級、特に「葛城」を活躍させる架空戦記を!と思ってしまう(吉田親司氏の小説だとあったな)
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